地獄の亡者は救うことができない~聚楽主相応「西地人」

さて地獄の話しが続いていますが、地獄に墜ちた場合、いかなる方法をもってしても救済することはできないと、原始仏教では説かれています。といいますか、お釈迦さまがそうおっしゃっています。

相応部経典42-6「西地人」というお経を読みますと、それが明瞭に書いてあります。お経の内容をかいつまんで説明しますと、次のようなお話しです。

あるムラの村長が、お釈迦さまに訪ねます。

「お釈迦さま、西の地方から来たある霊能者は、死んだ者を成仏させて天界へ送り届けることができると言っていますが本当でしょうか。なんでも彼は、水瓶を持って、花環を備え、沐浴をして身を清めて、そうして火の神に祈って、亡くなった者を天界に送り届けて成仏させることができると言っています。」

するとお釈迦さまは、「人を殺し、物を盗み、嘘を言うなど、さんざん悪いことをした者に対して、大勢の人が集まって『どうかこの人が成仏して天界へ行きますように』とお祈りをし合掌しても、地獄へ行くのは明らかであり、救済することはできない」と言います。

つまり地獄の亡者を誰かが救済することは不可能と言っておられるのです。

このことは、「石を詰めたツボを水中に鎮めたなら、どんなに祈祷しても合掌しても浮上しないのと同じ」としています。地獄へ墜ちた者は救済できないことを述べておられます。

地獄に墜ちると、自業自得で、業が尽きるまで何億年、年十億年も苦しみ続けなければならないようです。

時々死者を成仏させるとか言う霊能者がいますが、地獄に墜ちた者、動物となった者を天界へ往生させる(成仏させる)ことはできないことが、このお経からわかりますね。

餓鬼の一部のみ、場合によっては天界へ転生することができるようです。これが真実のようですね。もしも、先祖で浮かばれていない人を全部、成仏させるとか言う人がいれば、嘘か妄想、空想でしょう。

「西地人」のお経から、地獄や動物、餓鬼に墜ちた者の全てを救済できないと読むこともできます。

しかし、増支部経典・十集第十七「ジャーヌッソーニ経」には、人間が餓鬼へ供養できることが書いてあります。また後世のお経になりますが、餓鬼事経では、回向によって餓鬼道から転生できた餓鬼の話もいくつか載っています。

ですので餓鬼の場合は、回向によって救済されることもありますね。それが後の死者供養・先祖供養となっていっているんだと思います。

けれども全ての餓鬼を救済できるとは限らないようです。餓鬼の中でも一部の餓鬼ということのようですね。でも救済しようとする行いそのものは善行になりますので、餓鬼を救済することは行ったほうがいいですね。

話しがそれましたが、地獄へ落ちた人は救済できないとするお経の紹介でした。霊能者の発言の信憑性も確かめられる重要なお釈迦さまの説法でもあります。大変参考になります。