四聖諦(ししょうたい)。
仏教の教えが集約された最もエッセンス中のエッセンスとなるものですね。パーリ仏典の中部経典「象跡喩大経」では、四聖諦は象の足跡のようなもので、仏教のすべてが集約される教えであるとあります。
四聖諦は仏教では最も重視される教えになり、もっともコンパクトにまとまたものになります。四聖諦の解説も数多くありますが、簡単に言ってしまいますと、仏教の教えと実践を形式的に説明したものだと思います。
四聖諦は
苦(く)
集(しゅう)
滅(めつ)
道(どう)
となっています。
ここには、「心を浄める」という仏教の目的と、その「方法」と「仕組み」が簡潔に説かれています。
まず、仏教は「心を浄める」教えですね。これはもう大前提中の大前提であり、これを外したら仏教ではなくなります。心を浄める、言葉を返せば「煩悩を無くしていく」ということになります。
そうして、まず「仕組み」ですが、お釈迦さまは、心が汚れていく仕組みと、心が浄まっていく仕組みを四聖諦の中で説いています。
心が汚れていく仕組みは、四聖諦の前半で説いています。それが、
苦・集
です。
最初の「苦・集」では、心が汚れていく、つまり、苦しむ悩む仕組みを説明しているのですね。
どういうことかといいますと、
「苦しみがある、それには原因があるから」
ということです。
苦(結果)←集(原因)
という関係です。
「なあんだ」と思うかもしれませんね。これは現代人では当たり前のことに思われるはずです。
「原因があって、結果を生じる」という因果関係を説明しているからです。ですが、理知的に因果関係を知るだけでではあまり役に立ちません。せいぜい原因と結果の原理を知る程度で終わってしまうでしょう。
しかし仏教の特徴は、この因果関係を利用して、苦から解放することが可能と説いている点です。ここなんですね、仏教の特徴であり特殊性は。
その脱出方法を説明する前に、因果関係によって苦悩を引き起こしているということを、四聖諦の前半では説明しているわけです。
そして、仏陀は、苦悩を引き起こす原因を「執着(しゅうちゃく)」であると見抜きました。原因のもう一つに「無明(むみょう)」もあります。執着にしても無明にしても、これらが原因で苦悩を引き起こすということを見抜いたわけです。
四聖諦の前半では、「執着があるから苦を引き起こす」という真理を述べているわけですね。
では、四聖諦の後半はどうかといいますと、
滅・道
苦を滅することができます、それは八正道を実践することです
ということを言っています。言い換えますと、「心を浄めることはできます、それは八正道を実践することです。要するに救いの「方法」を説いています。
しかもこれも因果関係になっています。
滅(結果) ← 道(原因)
救いの因果関係ですね。四聖諦の後半は救いの真理です。そしてこれが仏教の実践になってきます。
四聖諦は、
・前半が苦しみの真理、
・後半が救いの真理、
というような二段構成から成る論理形式となっています。
四聖諦とはこのような教えになります。仏教の目的である「心を浄める」ことと、仕組み、方法が簡潔に述べられた教えになります。
しかし四聖諦はこれだけに終わりません。教えが立体的にまとめられています。実は、苦・集・滅・道のそれぞれをしっかりと知る(気付く)ことも実践に入ってきます。
経典中の四聖諦には
「こは苦なり」とあるがままに了知するのである。
「こは苦の生起なり」と、あるがままに了知するのである。
「こは苦の滅尽なり」と、あるがままに了知するのである。
「こは苦の滅尽にいたる道なり」と、あるがままに了知するのである。
とあります。
このように、苦や原因などもしっかりと気付いていく必要があることを示されています。
四聖諦は、教えや実践、仕組みが、立体的にまとめられていると思います。簡潔な4つの語句で表現していますが、その中身は大変奥深く、説明の仕方も幾通りも出てくると思います。ですが、ポイントを簡潔に押さえておくことは、実践上、必要であろうと思います。
そうして、これも大事なことですが、また先にも触れましたが、四聖諦の前半と後半は、それぞれ因果関係になっている点です。
苦悩の因果関係: 苦←集
救いの因果関係: 滅←道
ということです。
そしてこの因果関係を「縁起(えんぎ)」といいます。縁起とは、因果関係のことをいいます。縁起は、別名、因縁(いんねん)ともいいます。
時々、因縁という言葉を聞くこともあると思いますが、縁起のことをいいます。因果関係のことですね。
そして仏教では、この縁起を重視します。なぜなら、縁起を通して苦からの解放が可能だからです。
縁起は、森羅万象の存在原理でもありますが、仏教は、この原理を利用して、苦からの解放も目指します。縁起を使って心を浄めていくわけです。
では縁起をどう使って、心を浄めていくのでしょうか。
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